JSL研修報告

平成27年度 第2回JSL研修の分科会報告(今澤先生)

今澤先生

 今澤班ではJSLの教科ということで経験が0~2年めの先生方だったので、午前中はいろいろな教科の具体例をお見せしながら、JSLの授業の作り方についてお話させていただきました。午後からは6年生算数の「比例」と2年生国語の「仕掛けカードの作り方」という教材を使って、指導案ではなくて、授業つくりということで、どんなことを目標にしたらいいか、どんな支援が考えられるかという2点にしぼって、考えていきました。

報告

 日本語教室担当になって、今年初めてという新任のかたもいらっしゃって、本当にこんな事も知らないのかと言われてしまいそうなことを質問して、先生にも沢山答えていただきながら、それも考えなければいけないのかというところを各自出していきながら、みんなで具体的に考えあうことができました。

① 6年算数

 想定した子ども...フィリピンから来た男子。在日6年だが、今も算数の教科書に出てくる言葉につまずいていて内容の理解が十分できていない。
 学習目標:比例のグラフを書く

 例えば言葉としては、横軸、縦軸、そして交わるところ、何々の値、あるいは対応する、それからメモリだったり、直線という言葉だったりを、具体的に問題を解いて一緒にいろいろなことをやりながら、その中でおさえていきたいというお話がでました。

 それから文型としてもこの中にはおさえていきたい算数の目標を達成するとともに、日本語としての目標にも迫れる文型も見つけることができました。たくさん出てくる表現は、「〇〇の値が、Aの時、△△の値はBになります」という表現が、教科書のあちこちに出てきます。それを使って、繰り返し言っていくことで、例えば「値」という言葉についても、ああこういう事なんだなという理解を図っていく。あるいは「〇〇がAの時、△△はBになります」という他の教科でも使えるような文型を一緒に指導していく。という風にしながら、実際に直線をいっぱい書いて、これが直線というんだということを、体と行動で本人に何かしていく様にする。そういう授業展開を考えていくことができました。

② 2年国語

 想定した子ども...在日一年目くらいの中国から来た男子。
 課題...光村「しかけカードの作り方」をどのように展開するか

 教科の単元としてのねらいがなんであるかまずおさえて、ではJSL国語としてこの単元の目標はどうするか、それから日本語の目標はどうするか、ということを考えました。まずは作り方の説明の仕方が分かるという事と、分かった説明の仕方で他の物の作り方を書くことができる、この二つの教科の目標として考えました。それで日本語の目標としては、順序を表すことばがいくつも出てきます。まず、「次に」、「それから」、「今度は」、「最後に」、というその5つをきちんとおさえたい。それと何々を何々したい、例えば「画用紙を売ります」というような表現が説明文の中にも沢山出てくるので、それを理解させて使えるようにしたい。最後に作る時につかう言葉も沢山出てきます。「切る」「折る」「貼る」「開く」「計る」そういう言葉を実際に読み取りながら、あるいは作りながら理解をさせて、書くところでも使わせたいというようなそういう単元、指導、実際に授業を考えることができました。

 全部を通して理解支援と表現支援を最後にみんなでまとめました。また、「しかけカードの作り方」の実際の文章を使いながらどこを省いて、どこをどう変えていくかということを考えて、みんなでリライト文を作ってみました。それから教科書にも写真がのっているんですが、リライト文と写真をこども達にどの様に提示しているか、それでいて何を狙っているのかというような話合いもできました。表現支援としては、やはりワークシートがとても大事になるということで、ではそのワークシートをどんな形にしていくか、それぞれの子どもの実態にあわせて、言葉の負荷をどう変えていったらいいのかということを、具体的に話し合うことが出来ました。全体を通して、今目の前にいる子ども達に、ではこれをこういう風に変えて、使っていけるのではないかということを携えることができた分科会になりました。ありがとうございました。

今澤先生

 2点お話します。まず比例のグラフを書こうという算数の授業なのですが、在籍学級でもグラフを書きます。では、在籍学級の授業と、このJSL算数の授業と何が違うのだろうというところですが、やはり言葉に視点をあてているかどうかというところです。例えば「Xの値が1の時は、Yの値は2になります」という事をわざわざ短冊にするかというと在籍の方ではなかなかそこまでの支援はやらないのだけれども、JSL算数ではそこをよくしっかりと練習してあげて使えるようにする。しかも、グラフを書くという作業を通じて、横軸、縦軸、それから何々の値とか、直線という言葉を自然に算数の作業の中でやっていく。言葉だけ教えると日本語指導の授業になってしまうので、算数の作業をしながら、言葉にもスポットをあてて支援をするのがJSLですよということを確認しながらやってきました。それともう一つ、理解支援、表現支援の話で、皆様も普段の授業からやられていることをもう少し言葉に絞って支援をしてあげると、それがそのまま生きて行くのではないかと思っています。例えば、短冊にする、色分けをするというのは普通の授業でもやられている事ですよね。それをもう少し言葉にポイントを絞って、その子にあった支援を考えていてあげるとそれが理解支援になり、表現支援になりますようという話をしました。

 また、月曜日から皆さん子どもたち待っていると思いますが、共にがんばりましょう。本当にお疲れ様でした。