JSL研修報告

平成25年度 第1回JSL研修の分科会報告

今澤先生

課題を出しあい、アドバイスをしあって、学習を深めていきました。

その中で、勉強になったことを取り上げます。

一つは、しっかりとした実態をつかむということ。ここでは、勇気がいることではありますが、子どもたちの在籍する教室に入り授業の中で担当する子供の様子を見、今どんな指導が必要なのかを模索するということでした。

もう一つは、機器を利用するということ。

コミュニケーションが取れなくて悩んでいる方に対して、「iPodのアプリ(トランスレーター)を使っては?」という提案がありました。文字も音声もあるので、母語の文字が読めない子も音声で使うことができます。頼りすぎるのは問題がありますが、簡単な言葉ならばコミュニケーションが取れます。

また、「コミュニケーションに悩んでいるので、その子の母語を自習しているがなかなかコミュニケーションが取れない」という方がいました。これに対し、子供たちは自分の母語を先生が勉強してくれるということだけでもとてもうれしいと思うのではないか」という意見も出ました。


大菅先生

色々な体験談がありますが、一番大事なことだと話していたのは目標です。

日本語指導の目標、その子の目標、いろいろな目標があります。「そういう目標をきちんと保護者と担任と日本語指導担当とが共有し、同じ視点で指導に当たるということが大事」という話がとてもよかったです。

「教材のこと」「母語を使った方がいいのか」など色々な意見が出ました。けれど、一番良かったのは、普段会えない色々な地域の方々が情報交換できたという点です。

子供たちの指導に関わって20年経ちますが、最初の頃は一人でどうしていいか分からなくて、手当たり次第近くの研修会や授業公開に出かけていました。その中で、いろいろな先生方と出会いました。「こういう時にどうしたらいい」というような悩みを相談したり、いい教材を紹介していただいたり、ネットワークがどんどん広がっていきました。本日参加されたことがネットワークの第一歩です。なので、色々な機会に連絡を取り合い、「一人でやってるんじゃない」「みんなおんなじ悩みを持って頑張っている」という気持ちで子どもたちと向き合っていくのがいいです。


小川先生

クラスの中で友達とつながれる、いろんな学習が一緒にできる、教科の授業が分かる。それと結びつく日本語指導を作ってきた教材をお見せしながら話をしました。

そこで、「これは英語で使えます」「教科の間を超えていろんなものが作れます」という話をしました。「担当の子どもがどうやったらやる気が出るか」「何に困っているのか」をよく見ながら手元にできるだけ近いところにあるもの(教科の先生からワークシートを借りたり、それを少し手直ししたりして、分かるようにしていく)そういう工夫をしていくと、大変だけれども作り出す仕事があります。

例えば、修学旅行の事前学習や小学校の運動会が日本語の学習にどうつなげられるか。教室に自分は居ていいと思えるような活動づくりをしていくことを考えました。

それからもう一つ、中学生に大事なのが、学び方を学ぶということです。困った時に、方法を考えてそれを解決できるようにする。そのために、親切になりすぎず、むしろ自分が材料となって生徒が困ったときの対応を学べるような学習の場づくりをしていけばいいのではないでしょうか。

あとは、何かを話したくなる材料をぶつけ、喋りたくなるきっかけを与える。そういう活動の中から勉強していけば、教えたはずの文型が定着しないような学習ではなく、言いたいことが言えるようになるという前向きの学習になるのではないでしょうか。


近田先生

「初めてだから不安です」、「立ち上げたばかりだから不安です」、「教員が初めてです」というところから始まりました。でも皆さん、課題として、本当にJSLそのものを的確に挙げていました。そこに教員の素晴らしさがあります。教職のプロとしての先生方の力量というものがひしひしと感じられました。実態把握・ニーズ・計画等について具体例を持って話をするうちに、先生方ができそうだという表情に変わったのが何より嬉しかったです。

最後バタバタと終ってしまいました。しかし、二つ印象的な言葉がありました。

一つは、「楽しくできるということ」です。まず先生方が楽しい活動を想像して組み立ててください。先生方が楽しむことで、心地よい学び、意味のある学びというのがそこで生み出されていきます。楽しさの根源は、日本語学級だけで孤立して悩むのではなく、在籍学級との学びをリンクさせること。そうすることで学習の効果は上がると、参加された先生が言ってくださったことに、非常に励まされました。

もう一つの大事な言葉は、「一人だけでなく話し合える場があるといい」です。一人で抱え込むと煮詰まってしまったり、発想が偏ったりしてしまいます。「つながり」と強調されていましたが、このような場を生かし、ネットワークを作って、これからも共に学んでいきたいです。


西村先生

キーワードは目標設定でした。目標設定は、何回も折に触れて出てきました。それぞれの立場からの悩み(学級担任の先生との連携の悩みや指導面での悩みなど)が挙がりました。しかし、結局は目標設定。この子にどんな力をつけたらいいかにいつもたどり着きます。目標がはっきりしていれば、教科の指導であっても、初期指導であっても、最適な教材を準備できます。

例に出てきたのは、「どちらがどれだけ重いでしょう」というのを「分からないよね」っていうのではないということです。子供にどんな力がつけられるか。日本語の力だったら比較(比較するためにその文を二つに区切ってあげる)。そういうところが、お互い実践を合わせて考えると目標設定に全部なります。

それから、子供が日本でこれから先も生きるのか、それとも母国に帰ってしまうのか。それによっても、その子の将来に対する目標設定も違うのではないかという話も出ました。

おうちの方がどんな願いを持っているかでも目標設定は変わってくるでしょう。そうすると今度は連携(その子に関わる人が共通の目標に向かっていく)も重要になります。

私たち自身が日本語を指導していくという目標設定が先生方に夢を与え、先生方にやる気があるということが子供たちの将来を作っていくのではないでしょうか。今、そこに関わらせてもらっているのだなということを考えました。


濵村先生

先生方が色々なことに困っていて、すべてに適切な返答が出来たか不安です。「困っている」「勉強しなくちゃいけない」と思っているところに先生方の意欲を感じました。

課題は色々と出ました。しかし、一番の点は、子供が学習に向かう姿勢をどうやって育てるかということでした。いろいろな手を尽くしてやっているけれど、難しいということで、先生方の奮闘ぶりが伺えました。

その中で、坊主めくりを英語でした時のことが印象的です。先生方が英語で単語を言っていきます。その時に先生方が明るい笑顔になって英語を出そうとしている。子供たちに笑顔で勉強してもらうことが大事のではないか、ということを肌で感じました。

「笑顔がその場に生まれるように」「一言一言、愛をこめて、みなが、指導にあたっていければ」と感じました。

6歳の時に中国から引き挙げてきた先生がいました。当時、「周りが全然分からなかったから落ち着いて座れなかった」「追いつくのに10年かかった」ということを話してくださいました。

私たちが頑張って分かることを増やしていくことが、落ち着いて座らせる一歩だと実感いたしました。