JSL研修報告

平成22年度 第2回JSL研修の分科会報告

国語1「アップとルーズで伝える」(光村図書)

対象者と学習の状況

来日1年目の4年生。国語の光村の教材、「アップとルーズで伝える」とそのすぐ後にある「4年3組から発信します」を一緒にして単元を構成する。

22kokugo01_01.jpg

学習活動

まず「アップとルーズ」を読み取り、そのあと「4年3組から発信します」を勉強した後、最後に、学校にあるものをポスターにして伝える。

22kokugo01_02.jpg

リライトの作成

まず、今書かれている日本語の語彙や、表現を使ってリライトを分担して作りました。4年生の教材なので、たくさん文章がありますが、(指導する児童にとって)要らないところはどんどんとばして、逆にここに書いてある必要な部分はしっかりと残した形になっています。また、長い文章は分かりやすいように短くしたり、順番を変えたりもしています。

22kokugo01_03.jpg
22kokugo01_04.jpg
22kokugo01_05.jpg

ワークシートと授業展開

さらにこれを元にしてどんな授業をするかを考えてワークシートを作りました。最初に、このズームのものとアウトのものの写真からわかる事を自由記述で書かせます。

22kokugo01_06.jpg

例えば、人が小さいとか選手が大きいとか、色んな事を子どもたちがいろんな言葉で書いていくと思います。そしてこれを一所懸命読み、勉強した後で、このワークシートを使います。

これは何ですかと聞いて、ルーズかアップかを書くところですが、ここはこのアップ・ルーズのいいところを書きましょうという自由記述にしました。ここが一生懸命みんなで練り合ったところです。最初は「ここに答えを書いてしまって線で結ぼう」とか、「具体的な事象を文章にして『どれがAかBか』という問いにしてみよう」とか、色々と考えましたけど、午前中に合った発信ということを少し頭に入れて自由記述で書かせることにいたしました。

講師:濵村久美先生より

「国語1」では、来日1年程度の2年生の漢字程度まで習得した児童という設定で、リライト教材を作る研修をしました。ただ理解しやすくするためにリライト教材を作るのでなく、教材(単元)をよく検討して、この児童に身につけさせたい日本語の力、ねらえる目標を考えた上でリライト作業をしたので、作業中に「この表現は、身につけさせたい」「学校生活に「選手」はよく出てくるから、残そう」などの発言がありました。グループ内で自主的に作業が進み、最終的に「発信」(表現)のことまで考慮に入れたワークシートを作るところまで意識が高まったことが大変素晴らしいことだと思いました。  皆さんの作業で、私自身、『学習者の実態を把握し、題材をよく研究して目標を立て、将来使う「言葉の力」を伸ばす意識を持って教材を作っていく』ことの大切さを再認識させてもらいました。ありがとうございました。

【全体会報告】国語2「たからものさがして」(光村図書)

対象者:2年前に来日をし、日常会話は支障ないが学習言語はまだ限定的で支援が必要な小3の児童。

学習目標と指導の体制:地図を元に想像を膨らませて物語を書き、友だちと交流する。取り出しで2時間ほど支援。その後、友だちと交流したり、物語を書くところでは在籍学級に戻して、一緒にクラスの子どもたちと授業を受ける。

22kokugo02_01.jpg

分科会の流れ

まず、想定される子どもの躓きを考えました。

22kokugo02_02.jpg

語彙・段落・様子を表すことば・複合動詞などがあがりました。今澤先生に「躓き」が支援をしていかなければいけないところだと教えていただいたので、次に支援内容を考えました。物語を書いていかないといけないということなので、物語の設定と物語の展開って言うのは絶対大事だろうっていうことで、ここに書いています。表現とか語彙とか接続語あたりもきっと支援していかなければいけないだろうという話になりました。

22kokugo02_03.jpg

具体的な支援の内容、どうやって支援していくのかっていうことで、絵の利用と別のワークシートを作ったらいいと考えました。

22kokugo02_04.jpg

まずは物語の設定で登場人物、主人公は、どんな性格かな、特徴かなっていうことを教室でやり取りをしながらとか、絵を使ったりしながら一緒に作っていきます。

22kokugo02_05.jpg

次が物語の設定、物語の展開になっていくと思うんですけれども、例えば宝の地図を見つけたのはいつですか、どこでですか、誰が見つけたのかなってまたやり取りをしていきます。

接続語で文と文をつなぐっていうことを大事にしないといけないということも目標に上がっていたので、「場面と場面をつなぐ接続語はここに入れましょう」ということで、穴あきでワークシートを作ったり、モデルを示してその中から選ばせても良いんじゃないかというお話もありました。

22kokugo02_06.jpg

さらに、この設計図の中で情景を表す言葉が出てきてないんじゃないかっていうことになりまして、絵を描かせてその情景を表す言葉をやり取りをしながら、例えば「ここには古い大きな木があって進めないね」「道があります」「タヌキが隠れています」というようなことを絵の中にどんどん書き込んでいけばいいという話になりました。

そのあと、物語を作らせて在籍学級に戻すことも、途中その中でやっていくこともあるでしょうということで、学習を進めていくことになっています。 最後に今澤先生から「教科書の宝の地図は、登場人物やものなどの情報も多い。もう少し簡単な地図を用意するような支援もある」とのお話も頂きました。以上です。

算数「平行四辺形や三角形の面積」

対象者と学習状況:アジア圏出身、非漢字圏の小学校5年生の女子。編入1年程度で、算数用語や考え方は難しいが、計算はできる。

22sansuu01_01.jpg

想定される躓き:一番上に書いてある(右図参照)、ことば、語彙

学習の目標:教科の目標としては在籍学級と同じもの。日本語はこの躓きから「求める」を使って、自分の考えを伝えることができること(ただし、その子その子の状態が色々あるので、ここは色々なバリエーションがある)。

22sansuu01_02.jpg

語彙:その子にとっての必要を考えて選択

実際の学習活動

まず最初に考えたのは、興味関心を持って学習するためにはどういったことから始めて行ったらいいかということです。子どもの生活や身の回りにあるものなど具体的であることが大切だろうと。また、興味をそそるものというので、非常に不自然なんですけれども、このような平行四辺形と長方形のケーキの形をOHPのシートに半透明で印刷して、「どっちが欲しい?」「大きいのはどっちかな?」といった発問をしていくことから始めます。どちらが欲しいか、どちらが大きいかは、個別でやっていれば手元の方眼紙の上にその半透明のシートをおいて、実際にその四角の数を数えて行けばわかるだろうと。そうでなければOHPシートをホワイトボードの上の方眼紙にのせてみせたり、投影したりして、とにかく面積が同じだっていうことを視覚的に見せることができる。その上で「数えるのではなくて、もっと簡単に分からないかぁ」という発問をしていきます。その時に既習事項である四角形の面積の確認をしてもいいということでした。

22sansuu01_03.jpg

もっと簡単にするにはどうしたらいいのかについては、子どもの目の前でOHPのケーキを切り取り「どういう風に切りますか」と子どもにききながら、実際に切る方法を考えます。

多分、そのくらいの子どもたちなら「これ切って」「これこっち」みたいな答えが返ってくると思うので、それに対する答えとして教師がきちっとした日本語で、「ここで切って動かします」「そうするとどんな形になりますか」「長方形」「すると面積が求められますね」というやりとりをしながら、目標を確認していきます。中には切るところ間違えてしまう子も出てきますけど、「これでどうするの」「できませんね」というやりとりをしていこうと考えました。

22sansuu01_04.jpg
22sansuu01_05.jpg

最終的にワークシートにまとめを書きます。そのワークシートの例がこちらにあります。例えばこちらですとどっちが大きいですか、大きい方に丸を書きましょうっていいます。「どうしてですか」と聞いて「平行四辺形を色分けしながらこうすると長方形と同じ大きさになって、平行四辺形の面積は切って動かすと求めることができます」というのを書かせて確認するですとか、選択肢にしたものを使いながらそれぞれの今日の学習を確認する、というワークシートでまとめをするのはどうだろうか、という話し合いをしました。

講師:近田由紀子先生より

対象児童の実態や予想されるつまずきについてきちんと協議した上で、目標設定や学習活動の工夫をされていたのがよかったと思います。ニーズが明確になれば、それに対する指導も工夫しやすくなりますね。子どもの興味関心を高め視覚に訴える教具やワークシートによるまとめ等があり、魅力的な学習活動案を作ることができたのではないでしょうか

理科「光合成の確認実験」

対象者と学習の状況:中1、教室で実験は済んでいるが、その確認実験を日本語教室で行う。

22rika01_01.jpg

指導の過程

まず、葉っぱのたたき出し法で出てきたものを使って、青紫色になるというところを確認します。ここではことばと色を対応させて、この色はこれ(青紫)だよって、きちんと教えてあげなければならないだろうという話が出ました。

次に、青紫になったのは何でだろうということを確認実験を通してかんがえます。これを身のまわりのもので行います。例えばうがい薬のイソジンと片栗粉、早い話がでんぷんです。よく台所にある。実際に袋とかがあれば、そういうので子どもたちに読ませても良いわけです。そういうものを入れて、はい!魔法のようにこんな色に変わりましたという風にして確認実験をします。

さらに、比較実験をします。これは、太陽があたっている葉だけれど、あたってない葉はどうかというのも触れておくといいのではないか。ただここはもう、光が当たると青紫になって、でんぷんができているんだっていうことを、しっかり押さえたいわけです。なので光がない時にどうなるかまでやるとかえって混乱する場合もあると思うので、一応触れておくって感じで、押さえてあります。

22rika01_02.jpg

まとめのところは実態によっていろいろ変わります。ディスカッションしたり、ワークシートの(  )のところに書かせるという方法でもいいでしょう。日光が当たるとよくでんぷんができるということを、キーワードを元にして実態に応じたまとめ方をします。あと光合成ってことばですね。これだけはしっかり押さえておく。そんな話になりました。

講師:赤羽寿夫先生より

研修ご苦労様でした。学校教育の現場では今後、日本語指導(支援)と教科教育のバランスが、とても重要になってくるでしょう。それぞれ担当者間の意思疎通が重要になるのではないでしょうか。

日本語1「比較級、最上級を使った表現」

分科会活動の目標:「比較級と最上級の表現」を例に、生徒が興味を引く内容を考え、日本語の力と教科の力を得ていくような学習活動を設定する。

対象者:日本語の教科書を使って勉強し、比較級と最上級の課までの日本語学習は終わっているという中学生の外国人生徒。

中心となる表現:「AとBとどっちの方が~ですか」「○○の中でどれが/何が一番~ですか」

22nihongo01_01.jpg

活動の内容:アンケート調査と報告

1. まず生徒の関心がある好きなものを中心として、比較級・最上級を使った会話練習を教室活動でします(文型学習)。

2. 次に、クラスメートが好きだと思われるような項目について、質問項目を作って、クラスの人にアンケート調査をしていきます。例えばアイドルについて、今話題のAKB48とか少女時代とか嵐とか。「○○さんは嵐と東方神起とどっちの方が好きですか」のように。その際に、クラスの人の名前がちゃんと頭に入っているかも確認します。名前の読み方をひらがなに直した座席表、顔が分かる写真付きの名簿をもって、口頭でアンケートをしていきます。(コミュニケーション活動)

アンケートのときにどんな文で質問するか、心配なら「発話用紙」を用意します。 また、アンケートの結果を記入する用紙も生徒と一緒に考えて用意しておきます(認知思考活動)。

22nihongo01_02.jpg

3. 次にその結果をまとめます。グラフや表を作成してまとめたり(数学・社会など教科との関連、プレゼンテーション活動)、自分の国の生徒と比較して(母国の友達にEメールやチャットで最近のアイドルの様子を聞く)、考察を書きます(書く力)。難しいものでなくても、その段階の力でできることでいいと思います。

4. 結果と考察は、日本語の授業で報告して(発表活動)、他の外国人の生徒にも同様のアンケートをしたり、意見を聞いたりします(コミュニケーション活動)。

5. 最後にそれを学年通信・学級通信に載せてもらいます。皆さんに見てもらって「良くできてるね」「本当に東方神起より嵐の方が人気があったんだ」など、クラスメートも関心をもって、さらにコミュニケーションの機会を生み出したり、本人もやったことに対しての自信を持てるようにします(情意支援)。

講師:小川郁子先生より

今回のメンバーは、ほとんど日本語指導について未経験のかたたちでした。でも日本語学習は特別なことをするわけではなく、本当に知りたいことや学びたいこと、つながりたいことを学習の形に作り上げていけばいいのだ、と気づくと、いろいろなアイディアが出てきました。できあがって「なるほど」という声が出ていて、よかったと思います。

日本語2「トピック型:蒸しパンを作ろう」

分科会の目標:トピック型の授業として子どもたちの興味ある食欲と学習意欲のコラボみたいな形で蒸しパンを作ってみようということを考えた。

対象者:だいたい初期指導が終わった中学年、高学年児童。

22nihongo02_01.jpg

学習の流れ

最初に変身当てクイズ等をします。ペープサートみたいなものを最初に見せて、表の「本郷武」を裏の「仮面ライダー」にして、変わるっていうことを意識づける。だんだん「お米」をくるっとして「ご飯」になるとか、「氷」を見せて「水」になるとか、そんな風に「変わる」っていうことをここで意識づけたいと思います。 そのあと、「じゃあこの白い粉は何に変わるんだろうねー」っていうことで、子どもたちに色々絵や言葉で予想させていきます。そこで、「これからこの粉を使って蒸しパンを作ってみよう」ということを入れていきます。

この蒸しパンの作り方ですけれども、牛乳パックを3分の1くらいに切った入れ物に、電極を通し、ホットケーキミックスと水を混ぜて電気を通すと、それが膨らんで蒸しパンになるんだそうです。それをここで実験して、やるということです。その材料、何を使うかとか、作り方を絵や写真とやさしい日本語で手順を掲示して示したりして確認します。そのあと実際、蒸しパンを作ります。それから結果確認。これは食べて、ちゃんと白い粉が蒸しパンになったということを確認します。

そのあと、ワークシートに記入します。そのワークシートも、予想するときに使ったものを使用したり、それから穴埋めにしたりして、子どもがやりやすいように考えていきたいと思っています。ここでは最終的に「何々が何々に変わりました」という表現ができるようにしたいと思います。ですから「白い粉が蒸しパンになりました」そんなことができていれば、変化を観察することができたという評価ができると思います。

この授業を通して子どもたちには「何々が何々に変わりました」という変化を表す表現を予想して実験をして確認をして発表するというような理科特有の授業の中で使ってくれたらいいなと思っています。

日本語3「受身形の学習」

対象者:日本語学習歴は大体半年から一年未満の3年生4年生。

22nihongo03_01.jpg

学習の形態と状況:取り出し授業。日常生活で「ほめられる」「怒られる」「とられる」「見られる」といった言い方はなんとなく入っている。ない形、活用変化もできる。

分科会の目標:受け身の表現を、体験を通して実際に使えるようにしていく。

22nihongo03_02.jpg

学習の流れ

まず導入として、「お店の人が品物を運ぶ」「お肉をトレーにパックする」とかが書かれたテキストがあります。見開きで、こっちには「品物がトラックで運ばれる」「肉や魚がパックされる」となっています。その絵を見比べさせて「どう違うかな」といった形で導入していきます。ぼんやりですが分かってもらえたら、文型の練習のバリエーションをします。このような表で、例として「運ぶ」「運ばれる」。これを変化させるような勉強をさせた後に、動詞カードゲームをさせようと思います。神経衰弱のような要領で、辞書形と受け身形がマッチしたらそこでそれぞれについて能動態と受動態で短い文を作らせる練習をさせます。もう一つのバリエーションとして、コックさんが野菜を切るというようなのをやります。形の変化をドリルのようにどんどんやっていって、この応用の形を身に付けさせます。

22nihongo03_03.jpg

そこで終わりにしてしまうと、それを使って応用するなど、定着できないと思いまして、インタビュー活動を考えました。実際に自分の給食を作っているところ(調理員のかた)にインタビューに行き、簡単な質問に答えてもらうという練習をしてもらうつもりです。インタビューシートを用意します。ただ全部書くのはまだ難しいので、穴埋めのようなものを作りまして、「毎日何食」、ここに動詞の原形を書いておいて「作られますか」と聞いて答えを書いてもらうようなものを作ります。同じように「届ける」を「届けられる」と変化させて書くような練習もさせます。そして実際にこれを持って調理員さんにきいて、書いて、というところをしてもらいます。

まとめとしてそれを先生たちに報告するために、この報告シートを本人に書いてもらおうと思っています。「私は学校の給食について調べました。調理員さんにきいて分かったことが、二つあります」といったものを同じように虫食いでなんですが、「給食は毎日何食作られています」「何々は何時頃に届けられます」と書いていきます。そして日本語学級の友達の前で練習します。最後には、クラスの友だちの前で機会があったら発表してもらいたいと思うので、「何か質問はありますか」「これで発表を終わります」というような形でまとめさせようと思っています。

インタビューは日常会話ではないということと、やはり大人に聞くという緊張感で定着するんではないかと思います。また、受け身は「発見された」「立てられる」「輸入される」など社会の学習によく出てくる表現です。高学年の授業につながるような表現がここで入っていれば、この先の学習に役に立つんではないかと思って、このようにしました。

講師:和田玉己先生より

受け身形表現で『形の練習や形の定着練習』をさせるためのアイディアが受講者の方からもいろいろ出してくださいました。学習者が「『受け身表現』を使う場面が分かり、意味も分かり、活用の仕方もわかった。受け身文にも慣れた。でも自分の文脈でそれを使わなければ、使える練習として身に付いて行かない。そのためにはどのようにもっと発展させた活動があるといいだろう?」ということで日本語テキストのある課を使って実際にみなさんで活動をイメージしていきました。習った日本語を総動員して自分が知らないことを調べに行く、そして得た情報をまだ知らない人に伝える。伝える形は インタビューで聞いた通りの答えをそのままリピートするレベルから、あるいは書いてまとめて、フォーマルに発表するレベルなどまであります。このように日本語指導員も学習者とその学校のことなどいっしょに調べて発見できる活動はリアル感、わくわく感があります。そして、調べたことなど「内容」を伝えるときに使っている日本語は 「日本語が使えるように仕組んだ活動の日本語」になっているんじゃないかと思います。

日本語4「発信型の活動:好きなメニュー、理想のメニューを考えよう」

対象者:サバイバル日本語をすでに脱している子どもたち

22nihongo04_01.jpg

活動の目標:自分が考えたメニューを皆に分かってもらえるように説明する。自分が伝えたいところをアピールできるようにする。

22nihongo04_02.jpg

事前学習:メニューにはカタカナやひらがな、漢字が混ざっているので事前の活動としてその読み書きの練習ができる。献立の読み取りから材料の名前を読み取る、調味料、味付け、味の表現へと発展できる。さらに、昨日給食で食べた「大根の柚和え」を通して柚を学べば、自分の五感と言葉が組み合わさるのでよい。

用意するもの:献立表、料理の本、各国の料理(ネットから)、食材が載っている絵教材、お弁当屋やピザのチラシを切りぬいたもの、レストランのメニューなど

22nihongo04_03.jpg

まず低学年のゴールは「好きなメニュー、自分が食べたい物を好きなメニューを作ってみよう」、高学年は「理想のメニュー」として、例えば「目指せイチローメニュー」「イチローになるためにはどんなものを?」「お年寄りの為のメニュー」「小さい子どもの為のメニュー」という理想のメニューを作ります。

22nihongo04_04.jpg

ポイントは栄養のバランスを考えるということです。献立に「体を元気にするもの」「体の調子を整える」などの項目が書かれています。そのようなものも活用するといいと思いました。イチローになるためには、どのようなものを食べなくてはならないのかという点で家庭科と、地場産の材料を使う「地産地消」で社会科とリンクできると考えました。この活動の大きな特徴は、工夫次第で認知的活動の高いものへ発展させることができるということです。

22nihongo04_05.jpg

次にワークシートですが、高学年向きは「理想のメニューは何々です」と自分で考えます。絵を描いたり、写真を貼ったりできるようにしてあります。ここに自分の好きな料理がメインできて、牛乳以外の飲み物がいいなと思えばそれを書いてもらったり、スープを付け足したりできます(⑤)。ここに材料と作り方と味とありますが、作り方が難しいレベルの子は省いても良いと思います。材料は書いたり、写真を貼ったりもできますし、味もどういう味だったのか書けるようになっています。そして、この料理、このメニューはこういうところがいいんだよというアピールポイントも書けるようにしてあります。一応ポルトガル語訳もつけておきました。

このような発表を最後はクラスの皆にやっても良いですし、もうちょっと発展させて栄養士の先生に見せて評価してもらう、というようなことも考えています。 最後に対象としたレベルにまだ達していない子に「給食」というトピックで指導をする場合です。給食は楽しいけれど、やり方が決まっていたり、「帽子をかぶる」「白衣を着る」といったシステムがあるので、そこをまず教えること。「多くして」「少なくして」という言い方、宗教的な問題や好き嫌いで食べられないものがあると思うので、「これは食べられません」ということを伝える方法も教えた方がいいと話しあいました。

講師:谷啓子先生より

時間の都合で「給食」をメイントピックとすることはこちらから提案しましたが,参加者の皆さんが各現場で見聞きした給食・食べ物に関するトラブルをご紹介くださり,そこから発信型になりそうな今回の「好きなメニューを考えよう」に絞りました。年齢やレベルによって達成ゴールを臨機応変に変えられるよう工夫してあります。それぞれ背景の異なる子どもを担当されているので,配慮すべきポイントが異なり(例:漢字表記の有無),お互いに学ぶところがあったのがよかったと思います。

△ ページ上部に戻る

平成22年度 第1回JSL研修の分科会報告

第1回の研修会では、分科会に分かれて参加者と講師が日々感じている問題について話し合いました。今回研修に参加いただけなかった方々も、同じような悩みを抱えていらっしゃるかもしれません。各分科会の報告から何かヒントが見つかるとよいのですが...。

第1分科会 近田由紀子先生(浜松市立瑞穂小学校)

 グループ①は教育委員会国際交流協会民間団体または経験年数の長い、実績のある先生方のグループで、本当にリーダーシップがどの方もとれるような素晴らしいメンバーでしたので、とても充実した協議ができました。
 ここでは、広域な散在地域での体制づくり、連携と人材の育成という二つのテーマで協議を進めましたが、これは別物では無くてどちらも両輪で進めて行かなければいけないものだ、ということが分かりました。困難と思われることとして、教員、保護者、地域住民それぞれの意識に問題があるのではないか、それらをつなぐための手法はあるのか、と考えると、地域として外国人支援の必要感が乏しいのではないか、ようはその必要感をどう引き出していったらいいのかだ、というところで人材育成と深くかかわってきます。そのどうやって引き出すかで、やはりアクションをまず起こすこと人間関係を、少しずつ構築していくこと、そして研修プログラムを充実していくことではないのか。
 研修プログラムでは面白いものを教えていただいたんですが、リスクマネージメントという研修で、どんなリスクがあって今何が必要なのかを、外国人に特化して考えるのではなくって、学校の教育課題として全体を見渡して考えると、外国人の課題が中に含まれて、大切なことなんだということを、管理職、教員、その他の方でも、抵抗感がなく、考えてもらえるようになるのではないかということでした。 
 それから全く違う、多言語の環境の体験をしてもらうことも良い研修になるのではないか、また、専門性を高める為の研修もきちんと行って、人材の育成、引き継ぎ等をやはりきちんとしておかないと、うまくその地域の活性化にもつながっていかないのではないか、ということでした。
 何にも増して、やはり顔を知ることからではないか、ということで、出来るところからとにかくいきましょう、っていうことです。メンバーの一人はメモにアクション×3と書いていました。期待したいと思いますし、また、素晴らしいメンバーが集まっていましたので、これからもここのネットワークも大事にして、学び合っていきたいですね、ということで話しが終わりました。

第2分科会 菊池聡先生(横浜市立いちょう小学校)

 第二グループの方は小中学校の学校の職員の方々、またNPO等の支援者の方々、特に多文化とか国際というところについて、日頃向き合っているところの方々のグループだと思います。普段抱えていらっしゃる悩みなどを話していただきました。まとめると、母語について・在籍学級との関係性について・学習障害について、の3点でした。
 まず、私の勤務校である横浜市のいちょう小学校でのことを話しました。母語については、子どもたちの自尊感情を高揚させるための支援ということに置き換えて、親子コミュニケーションを促すための支援を中心に行っているという事例をお話ししました。皆さんからいただいた感想には、少し母語を入れると、日本語だけで日本語を教えるよりも子どもたちが安心して学習が効果的に行えたよ、といったものがありました。
 在籍学級との関連性では、在籍学級と取り出される子どもたちが、一緒に勉強しているということがその子に与える安心感であったり、心の隙間を埋めるような支援をしているという具体的な事例を、少し映像を見ていただいてお話ししました。そういった取り組みには、日頃から担任の先生とのよりよい関係づくりが必要だ、または学校全体でどうやってその課題を共有していくかといった話しがありました。
 最後の学習障害の事ですが、個に応じた有効な支援という視点で、考えられた時点で専門家に関わっていただきながら、どこでどんな支援を行っていくのが効果的なのか、という見極めを早めに行い、やっているということをお話ししました。しかし、問題行動が見られないお子さんや学習ができない子がたくさんいるので、あいかわらず国際学級の方で、疑いのある子どもたちを見ざるを得ないという現状がある、というお話もありました。

第3分科会 黒須陽子先生(宇都宮市立清原東小学校)

 グループ③は、指導員の先生が二名と大学関係者が二名、あと国際学級担当の教員が私を含めて4名でした。課題として挙げられたことは、学校の体制作りに課題があるということ、日本語の具体的なカリキュラムを知りたいというもの、日本語教室の役割、日本語教室が学校内でどのような存在かということ、指導と評価について、子供たちが多学年にわたってクラスに来てしまう難しさ、母文化の尊重する教育をどうしたらいいのかなどでした。その中で主に話し合われたことは校内の体制作り、ということでした。
 その話し合いの中で、時間割をそろえるということもとても大切なことである、それによって、子どももすごく成長するのではないかということを事例や実践からアドバイスしていただきました。また、現実には時間割をそろえるというのはとても難しいことなので、そろえられない場合は、どうやって効率よく教科指導をしていくのかの、具体例を先生方に出していただきながら話し合いを進めました。
 その中で学校の中で日本語教室はどのような存在かということが、話題に上がりました。日本語学級の認知度を高めていくことで、いずれは時間割をそろえていただけるようになったり、日本語学級の子どもたちを在籍学級の方で大切に扱ってくれるような流れになるんではないかといった話し合いも持たれました。それにはやはり私たち担当の側から担任の先生や学校の管理職や教職員の先生方に、日本語教室について伝えるアプローチが必要だ。私たちから情報を発信していくことによって子どもの指導によい方向に流れるのではないか、という風な話し合いの結論に至りました。
 また、親子で言葉が全然できなくなってしまって、コミュニケーションを取れないというような事例があるそうです。そういった問題が、子どもの非行につながったりするので、小さいうちから母子間のコミュニケーションをどういう方法で取るかということを、家庭で考えていってほしいってことを、学校側担任、子どもに関わる教員がアプローチをしていかなければいけないんではないか、という話し合いをやりました。
 そのための用法としては、子どもの能力をはかるスケール的なものがほしい、後はどの地域でも使える日本語指導の指針が欲しい、指標が欲しいというようなことも話題に上がりました。

第4分科会 濵村久美先生(新宿区立大久保小学校)

 私のグループは初年度、二年度の教諭と指導員の三人のグループで、モチベーションが上がらない、効果が遅い、というのがテーマでした。それには二つの事が大切であろうという話になりました。
 まずは実態把握の大切さで、担任の先生との情報交換をしよう、親との情報交換をしていこう、子どもが将来に日本語の必要性を感じないようなのでその辺の情報を集めようといったことと、それと教材を工夫しようということで、話し合いを進めました。
 モチベーションを挙げるのに効果的なものの一つはゲームで、「書き順が治らなかった子が急に書き順気をつけるようになったのはDSのおかげだった」という例や、「学年別漢字トランプ、部首かるた、漢字すごろくはとてもいい」といったことを話しました。
 作文や会話に関しては、目的意識、相手意識がとても大切なので、やりたくなる、書きたくなる相手を選んでやる、先生たちにインタビューやアンケートしてみるなど、目的意識をもてる活動を設定するのが大切ではないかという方法も出ました。
 また、それと授業の時に母語をちょこちょこっと話してやると、すごく気持ちがあったかくなるのか、盛り上がるのでちょっとした母語を活用するのも良いのではないかということを話しました。

第5分科会 高橋理恵先生(豊島区立池袋小学校)

 私のグループは日本語担当教師3人、指導員3人で話し合いをしました。
 限られた時間の中でどう力をつけていくかという課題については、今澤先生がおっしゃった先行学習が有効ではないか、特に高学年の場合にはかなり効果が上がる、というようなお話になりました。それにはまず年間計画や指導書などで進度を確認しないと先行学習ができないので連携は大事だという話になりました。また、限られた時間ですので、その中で記憶に残る学習をさせることが必要です。手作り教材で印象付けたり、ワークシートで定着を図ったりして、教室に行った時も思いだせるようにする。クラスと同じノートを使い、担任の先生も見られるようにして連携も図るという意見が出ました。また、家庭学習も行い、限られた時間でも学習が連続していくようにしたいという風にまとまりました。
 連絡については、ファイルやソーシャル・ネットワーク・サービスで連絡を取った、メールは電話よりも時間的に自由がきいてよいのではないか、という意見もありました。また教科のテストを日本語学級でやった場合に、この印が付いているときは自力で出来た、この時には読んであげたというようなことが担任に伝わるようにするとよいという話も出ました。支援団体ではコーディネーターが学校の年間指導計画をもってきたり、学級の様子を伝えてくれたりするというところもありました。学校との連携がうまく図れず、子どもが指導員さんになついているのを甘えていると思われてしまうというちょっと深刻なお話も伺いました。ただ、日本語指導者は子どもの最初の味方になるので、子どもがそれを必要とする段階では話を聞いてあげることも大事ではないかとお話がありました。担任の先生にも今はこういう段階です、とお伝えし連携を図りたいということになりました。
 日本語が話せるようになると勉強をしたがらないお子さんについては、教科、特にクラスでやっている内容については強い動機づけが持てると思いますので、それをアレンジしながらやっていくことが子どもを日本語に結び付けていく強い動機づけをもたせていくことにつながるのではないか、という話になりました。
 それから、子どもというのは、先生に教わった事は忘れても、子ども同士で勉強したことは忘れない。別の子が間違えて自分はちゃんとできたことは覚えている、ということがありますので、子ども同士の学び合いの場所をつくるということも良いのではないかと思います。

第6分科会 今澤悌先生(甲府市立新田小学校)

 グループ⑥でもまず悩みを出していただきました。
 教科内容をどう理解させるかという点では、まずは在籍学級で学ぶ前に内容をつかませていく先行学習が有効ではないかということ、それによって、在籍学級の中で少しでも分かったとか、内容が理解できたと思えるようなことをやっていくということを話しました。目標設定では、その子の今の日本語の力ではここまで、もう少し豊かな表現を理解させていきたかったらここまでという形で高めていくという話がありました。
 文字指導では、日本に来て四カ月ほど経った子どもたちが、まだひらがなカタカナも読み書きがままならないという悩みが出されました。子どもたちの能力や個々に持っているものが非常に多様なので、まだ時間がかかっているのではないか。中には会話が出てこない子もいるということでしたが、今言葉をためている沈黙期で一気に話す時期が来るかもしれない。あとは保護者と通訳の方を交えて話し合う機会をもって、母国にいた時の教育歴や成育歴を聞きとる中で、様子を見、そのうえでまだ難しいなら、能力的な問題や学習障害、もしかしたら心理的なものもあるかもしれない。なのでもう少し指導続けながら一つ一つその要因を考えていったらどうか、という話し合いがなされました。
 もう一つは語彙不足の話でした。外国籍の子どもたちが多く、友だち同士でも母語が通じる環境でなかなか語彙が増えていかないということでした。日本人の子どもたちや教師を巻き込んだ活動を多くもつ、読み聞かせや音読の中で語彙を増やす、読み聞かせでも言葉遊びや、その物語をもう一度話してもらうなどの活動をするという話もありました。高学年の子どもについては、一年生の漢字や簡単な言葉からではとても追いつかないので教科につながるような言葉を教えた方がいい。授業にいきるような言葉から増やしていったらどうかという意見も出ました。

第7分科会 傍士輝彦先生(東京学芸大学附属世田谷中学校)、郡司英美先生(宇都宮市教育委員会)

 グループ⑦は主に中学校に関わっている方々のグループです。やはり話題の中心は中学生に独特の、生活指導がらみのJSLの子どもの世話。それから、進路・進学のことです。
 日本に来る一部のJSLの子どもの背景は複雑なものもあり、そういった子どもが、家庭環境が厳しいなどの理由で日本語環境に慣れない。したがって生活指導上の面倒が出てくるし、当然進路や進学にも響いてくる。そういった、結構現実的な問題があります。
 小学校と一番違うところは、三年間しかない、ということです。そして受験を避けて通れない。もしなんとか受験を突破しても、その先には単位が待っているので、一年後には厳しい状況の子どもが増えている。下手をすれば辞めてしまう。どうしようか、というような悩みを、みなさんそれぞれの立場から話していただきました。
 行政とか制度とかいろいろな問題がある事ですので、我々だけは解決には至らない。例えば、高校進学も大事だけれど、その前に他の職業訓練校などで日本語環境にまず慣れて、そのあとで進学、ということを考えても遅くはないのでないか、という私の体験の話もいたしましたし、郡司先生からも基本的な支援の仕方などの資料が配られて、悩みをみんなで共有して議論していくという形の会になりました。
 中学高校となるとなかなかコミュニケーションもとりにくいけれども、その中で何とか保護者との関係をうまく作ったり、教員を含んだ、進路指導や進学指導への関わり方なども話題に上りました。

第8分科会 和田玉己先生(九州大学留学生センター)

 グループ⑧は日本語指導員の方、協力者の方のグループだったんですが、大きく三点が課題として挙げられました。
 日常会話ができるようになったけれども、少しでも教科のお手伝いはどういうことができるだろうか、っていうことについてが一つです。
 あともう一つは本当にゼロで来た人に、どうやって効率よく教えればいいだろうか、ということ。そして、限られた時間で、日本語、外部からのサポートと担任の先生や教頭先生との連携をどうして行ったらいいかということが出ました。皆さんから解決策などを伺っていて出てきたことは、結局は外部者である指導員の私たちが担任の先生を巻き込んだり、他の事務の方を巻き込んだりしながら、どれだけ学校の中に入り込んで関係をつくっていけるかが課題だと言うことで、そうやって入り込んで色々協力していくことが、実は一番効果的な効率のいいことになるのではないか、という話に最後落ち着きました。

第9分科会 赤羽寿夫先生(東京学芸大学附属国際中等教育学校)

 私どもの分科会は、それぞれ日本語指導を担当されている先生の方から、普段の日本語指導ではなくて教科指導をするためにはどういうことが必要か、どういうことを考えていかなければならないか、というようなある程度初期指導が終わった子たちの話を進めていきました。
 その中での結論なんですが、学習は学校がやるべきことであって、学校の先生方に頑張ってもらうというのが一番一つの結論でした。ただ、そこでもう日本語指導の先生たちは何もしないのではなくて、評価者ではない立場で子どもたちとしっかりと教科を一緒に楽しくできるような環境、またはそのための準備等を進めていくことが子どものためになる大事なことではないか、というような話し合いがありました。

△ ページ上部に戻る