JSL研修報告

平成26年度 第3回JSL研修の分科会報告

近田先生

【報告】

 小1 国語「かき、かぎ」

 小2 国語「へんしんしてお話を作ろう」、「はんたいのいみの言葉」、
                「大事なことを落とさないで聞く(聞く・話す)」

  小3 国語「すがたをかえる大豆」、「人物の気持ちを考えながら読む」

【主な話題】

・ 授業構想

 全てが子どもにとって意味ある活動になるようにする。子どもの学習に対する必要感、知的好奇心を掻き立てるようなアイデア。子どもが読解力を高め思考を深められるような日本語の支援。

・支援の工夫

 リライト教材ではなく教科書の文を分かち書きにした教材の提示、具体物や絵カード等の活用(提示用と児童の操作用を準備)、ペアでの話し合い活動、日本語の個人差に合わせた支援(根拠をもって言えるようにするモデル文の提示、ヒントカード、ワークシート、絵本、パネルシアター等)、在籍学級との教材の共有

*  環境や体制の違いはあっても、教師の熱意とアイデアが子どもたちの学びを支えていく。それが、教科の目標を超えて子どもの学びや学ぶ姿を変えていく。

【講師の感想】

 外国人の子どもが多種多様なように担当の先生方が置かれている環境も多様です。本分科会には、17年間も担当されているベテランの先生もいらっしゃれば、今年立ち上げたばかりで大変厳しい状況にあるという先生もいらっしゃいました。教育環境や体制に大きな差はありながらも、ここで一緒に学びあいができたことは意義あることだと思います。

 先生方の実践はレベルが高く、中でもベテランの先生のご発表は、中身が濃くきめ細やかな支援の数々があり、講演会をお願いしたいと思うほどでした。ご紹介いただいたのは3年生の説明文「すがたをかえる大豆」です。以前はリライト教材を使っていたそうですが、それでは内容理解が十分ではないと気が付き、敢えて教科書の文を使うように変更されたそうです。そのため教科書の文章の難しさを軽減させるために、文章を分かち書きにしたり、二人組での音読や話し合い活動を取り入れたりされていました。また子どもが躓きそうな言葉について、視覚からも理解できるカードを教師の掲示用と子どもの操作用の2種類を作成して活用されていました。先生の授業構想には、学びを促すための必要感や思考的な活動、知的な好奇心などを促すための手立てがしっかりと組まれており、無駄がない。これだけの授業をしたら子どもの力は確かに高めることができるでしょう。実際その成果が子どものワークシートに表れていました。

 他の先生方も、やはり具体物を使われたこと、子どもが躓きそうなところをいかにわかりやすく支援されたかを多々発表されていました。例えば、語彙の少ない子どものためにパネルシアターのような教具を利用したり、絵本作りを通して人物の気持ちを想像できるようにされたりしていました。その絵本作りでの出来事も印象的でした。吹き出しに人物の気持ちを書くという授業で、子どもが1時間一生懸考えたけれどもどうしても納得がいかなくて、授業の最後に自分が書いた部分を消してしまったそうです。それを見た先生はその時間がすごく残念に思えたとおっしゃいました。しかし、その子は次の取り出し指導時間、前時に消してしまったところに自分の納得のいく言葉を書いたのだそうです。この間は相当時間がたっているはずなのに、ぴったり合う言葉、自分が納得できる言葉を考え続けていて、そして見つけてきたのです。このエピソードを聞いて、私たちグループの参加者は感動して声を上げました。中途半端にあきらめてしまうことなく、自分の正直な気持ちを表現できる子どもがいる、また表現することを受け入れてくれる先生がいらっしゃる。このような教科指導を支える子ども理解があってこそ、子どもたちは安心して学び育っていくのではないかと思いました。

 今回も私は素晴らしい先生方に出会えて、実に多くのことを学ぶことができ感謝しています。JSLカリキュラムや発達心理学の理論を基盤にしつつ、先生方の熱意とアイデアによって豊かな教育活動ができることを実感しました。また今後も、各地で活躍されている先生方の素晴らしい実践を多くの方々と共有していけることを願っています。

konda.JPG


 今沢先生

 今澤グループの発表では、算数についてそれぞれ実践を持ってきていただき意見交換をしました。

①    複数学年グループ 算数/トピック型JSLカリキュラム「バザー」

 算数の授業を想定していたが、トピック型JSLの授業に「なってしまった」実践です。異学年の二人の授業として、また「おまつり」を授業に取り入れた取り組みでした。子どもの興味関心に加え、学校行事をリンクさせ、日本語の学びを入れていく内容です。「受け身の学び」ではなく、「子どもが効果的に学ぶ条件の一つである、生活の中で学ぶ必要があるものの中からトピックを選定した」というとても素晴らしい実践でした。指導案の中で、日本語と教科の目標をそれぞれ明確にして、子どもたちが複数いる場合はそれぞれの目標を立てること、授業で扱う具体的な日本語表現を明記したり、主なやり取りを入れていく、理解支援、表現支援を明記していくことも大切だろうという意見が出ました。

②    小5 算数「いろいろな形の面積を求めよう」

「三角形の面積を求める」在籍学級の授業(ユニバーサルデザインの授業)報告でした。まず1時間の「めあて」の明示化が大切という意見が出ました。子どもにとって授業で何をやっているかが明確になり、教師もそこに立ち返ることができます。また面積を説明するのに使う言葉を明示された授業でした。直角三角形、長方形、半分、移動等、説明で使いたい言葉のリストを黒板の端に用意して、それを思考のヒントにさせています。「言葉を思考のヒントにさせていく」事は非常に有効な実践でした。また言葉の力が弱い子は、自分の思考を表現するのは非常に難しいです。発表の時に「表現モデル」を用意するのも有効な支援です。「何々を何々へ移動します」、「何々を半分にします」、「長方形になります」、「長方形ができます」というような、説明に使う言葉をモデル文にして用意し、それを使って発表させる実践も紹介されました。板書を写真に撮るというアイデアも出ました。前時を想起させる、担任に見せて意見・情報交換に使うというアイデアが紹介されました。

③    小2 算数「分けた大きさをあらわそう」

注目させたい言葉や表現は色を変えて明示する、という理解支援を紹介されましたが、チョーク一本でも色一つでも理解支援ができ、それがまた大切だという意見が出ました。また「短冊化」の有効性も話されました。パターンで数字や言葉を入れ替えるなどの利用幅が広がることと。黒板を消した後に使うこともできるという工夫でした。

④    小5 算数「平均」

公式も言え、計算もできるが、意味や概念を理解できていない子を何とかしたいと実践された授業でした。具体的な活動体験を通して概念と言葉を結び、平均について理解させていったという、具体物を通した体験的な授業が大切だということでした。

日本語指導だけでは、学習言語をはじめとする言葉の発達は、日本語指導だけではなく、在籍学級において、理解支援や表現支援を普段の授業に積極的に取り入れていって頂くというような、「言葉を意識した授業(在籍学級での授業のユニバーサル化)」が、状況を少しでも改善できるのではないか、そのためには在籍学級の先生たちに働きかけていくということが大事じゃないか、という意見が出ました。

また全体のまとめの中で、子供が学ぶことに対しては、そこに必然性や必要性を持たせないといけないね、という話が出ました。参加された先生方、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。

imazawa.JPG


 小川先生

【報告】

①     授業報告:中3 理科「食物連鎖」

②     授業報告:中1 日本語「スピーチをまとめる」

③     授業見学報告:夜間中学 複数学年グループ 日本語「食育」

④     三重県の日本語指導担当初心者向け研修用DVDの紹介

→三重県では、管理職の悉皆研修で外国人児童生徒教育について学ぶ制度あり

 

【主な話題】

・ 教科学習の支援方法について

視覚的情報を活用することで、言葉に頼らずかなりの内容を伝えることができる。

→資格情報が活用しにくい単元では、ルビ付き教科書・母語による教材など、いろいろな方法を考えましょう。

・ 支援者による取り出し指導と教室での学習活動の連動

今回紹介していただいたような、インタビューをして聞き取った内容をまとめる活動は、学年の取り組みとしてのキャリア教育(職業調べ、職場体験活動)などと連動させて取り組むと有効。

→支援者は学校・学年の取り組み、教科の単元の進行について、学校側から情報を得ることがとても重要です。

・ 栄養などのテーマは、教科と直接的に結びつかなくても、中学校段階で知識として学んでおくべきことで、日本語で教材として扱うとよい。

→中学生の女子って、知識なしにむやみにダイエットをします。母語で情報が入りにくくなっている分、生きていく上で知っておいてほしい情報を伝えるような授業を日本語指導の中で考えたいですね。

・ リライト教材について

作り方についての質問、作成した教材の共有について情報交換しました。

→日本中の先生方がリライト教材を作っています。共有できるといいですね。著作権の壁を何とか乗り越えられるといいと思っています。

 

【講師の感想とメッセージ】

 中3理科の授業報告がとても有意義でした。難しい内容ですが、理科の先生にもアドバイスをもらい、写真をたくさん用意して、それを使ってうまく理解させることができていました。今回は、作った写真を持参してくださいました。毎回の授業のことを考えると、特別に写真を準備するのは本当に大変です。教科書の写真をうまく活用する方法や、JSL教科学習は日本語の力に差があっても同学年の複数の生徒で学びあうとさらに有益であることなどを話し合いました。まずは、チャレンジしてみること。そこから、次の工夫が生まれてくると思います。第3回目は、実践の交流がとても有効だったと思います。

owaga.JPG


 大菅先生

【報告】

①     小5 日本語/社会科「都道府県の名称と位置」

②     小5 日本語「上・下・右・左・まんなか」

 

【主な話題】

・  子どものやる気を引き出すには

・  日本語指導の予定と教室からの要望

 教室でクラスの友達と同じことができるのは、子どもにとってとても大切なこと。日本語指導者がやりたいことより「子どもが活躍するために」という視点が必要。

 

【講師の感想】

 第一グループを担当しています、京都市の大菅です。第一グループは、初期指導の子どもさん、来日してまだ3か月ぐらいのお子さんを持っておられる方ばかりの3人のグループでした。3人のうちお二方がこの4月から国際教室を担当されている先生、そしてもう一方は外からの日本語支援の支援員さんで、1週間に1回だけ学校で取り出し授業をされておられます。実践報告としては、お一方からは、上・中・下をどんな風な教材を使ってどんな風な楽しい授業をしたかというお話、もう一方からは都道府県名を覚える指導案の提案がありました。都道府県名は、興味のある子どもはどんどん覚えますが、興味のない子どもにどういう風に覚えさせていったらいいのかということが話題にあがりました。

 今日教材を持ってきていただいたということもあり、分科会の中心は、いかに子どもの心をつかむか、興味をひくか、やる気にさせるか、ちょっと頑張ってみようと思わせる工夫をするか、どんな教材を用意したらいいのか、どんな風な導引をしたらいいのか、どういう風に子どもが勉強したことを使える場を設定していくのかといった話でした。もう一つ悩みとして、初期段階では、学校生活のいろいろなこと、例えばもう少ししたら学芸会がありますが、学芸会でこの笛をどうしてもみんなと一緒に吹きたいので、個別の指導の場でお願いできませんかというようなことや、こちらが日本語の指導で今日はこれをやろうと思っているけれども、教室からは違う要望が出ることがとても多いという話題になりました。それについてはやはり、子どもがクラスでみんなと同じことができたという時間がとても大切になるので、JSLのトピック型に繋がっていくかとも思いますが、指導者の方がそれを楽しんで、いかに日本語の授業として頼まれたことを取り上げていくのかを工夫をしていくと、こちらの気持ちとしても、また今日やろうとしていたことできなかったということではなく、子どもが活躍するためにやっていくというような気持ちでやっていけるのではないかと話合いました。

 私は子どもたちに直接関わらなくなってから、5年が経ちます。今日、午前に実践報告を聞き、午後も、毎日そういう子どもたちと向き合って悩み試行されるみなさんの姿を拝見して、当時は子どもたちにどう接したらいいか毎日悩んでいて、大変だと思うこともすごく多かったのですが、今実際に子どもたちに教えられるということが、すごくすばらしいことなのだなと今日改めて感じました。日々指導の中で困ることや悩むことが数多くあると思いますが、直接子どもたちに関われることはとても素晴らしい機会でありますし、今日も最後にグループでもメールのアドレスの交換をなさっていたのですが、こういう場で会われた方にいろいろな場面で相談したり、気軽に聞ける仲間をたくさん作ったりしていただけたらなと思います。一分科会の報告、簡単ですが以上とさせていただきます。

osuga.JPG


 全体会

実践報告1.JPG

実践報告2.JPG

授業実践報告「JSL研修会から教室へ」

報 告:川尻 年輝(小谷村立 小谷小学校)

     市川 昭彦(大泉町立 北小学校)

△ ページ上部に戻る

平成26年度 第2回JSL研修の分科会報告(濱村先生)

国語B:濱村先生

【授業づくり】

 私たちの班では、4年生の国語で「アップとルーズで伝える」という教材説明文のあとの「仕事リーフレットを作ろう」という単元において、説明文に基づいた活動をどういうふうに進めていくかについて検討しました。対象は4年生の男女各1名、来日1年前後のフィリピン、中国の子どもで、漢字の使用に制限があること、使える文型にも制限があることを考慮して、対象に合わせた内容を考えました。教科書には「仕事リーフレット」とありますが、JSLの子供たちが興味を持てるもの、取組みやすいものとして、学校で働く人に関わるものはどうかと思い、「○◯小○○室リーフレットをつくろう」という風に、活動内容を変更しました。それから子供たちが活動しやすい支援として、リライト教材を作る、そのまま使えるインタビューシートを作るなど、いろいろ支援を考えました。今回は、実際の活動の前段階の教科書の活動内容を理解すること、ワークシートをどのように工夫すれば子どもたちの活動に役立つかということについて検討しました。

 まずリライトについては、元々の教材文を4年生の漢字の制限、それから文型の制限に合わせて書き換えました。またワークシートも、インタビューをしながらリーフレットを作ることになったので、実際にインタビューをする際に使う表現を載せるワークシートを作りました。この時に気を付けたことは、スムーズにいかずによく分からなかった場合もあるので、ここに豚さんのマークがあるように、何か困ったときは、「もう一度言ってください。」という、お助けフレーズもワークシートに入れると役立つのではないかという意見がありました。それから、リライトをする際ですが、教科書をそのままだらだらと簡単にしていくのではなくて、あくまでも教科書の構成をそのまま残し、写真があるところはちゃんと写真、教科書の下の部分の文章はここの部分っていうふうに教科書と見比べたりできるようになると、学籍学級に戻ったときに自分がやったところがどこなのかということをしっかり把握しながら勉強できるのではないかということになりました。

【参加者の感想】

 児童の状況に合った支援ということで、例えば、来日してまだ日が浅い子には、その時点の言葉の力に合わせて、できるだけ分かる形で、興味をもてる教材で作るというのが大事だと思いました。

【講師から】

小学校日本語学級教諭、日本語指導講師、日本語指導コーディネーターなどのいろいろな立場の6名の参加者が協力して、2名ずつの3チームと私も一つの部分ということで4つの班を作り、一つの国語教材を4つに分けて、リライトやワークシート作りをしました。

どのペアも「児童の言語力・児童の意欲を高める教材・児童の状況に合わせた支援」を意識してくださいました。「この言葉は、分かるでしょうか?」「この言葉は、あえて、ここで学習させた方がいいですよね。」「連体修飾を含む主語の部分は、分かりにくいから、文を区切りましょう。」「インタビューのときに、分からなくなったときの言葉を書いておきましょう。」などの言葉が交わされていました。また、「そちらの部分で、この言葉をつかっていますか?」と、4つに分けた部分同士のつながりも必要という気づきもありました。時間があれば、更に単元全体を見通した教材ができると感じました。

今回の成果を元に、それぞれの教育現場でこの教材を完成させて使ってくださるとうれしいです。

2014jsl2-7-1.png

2014jsl2-7-2.png

2014jsl2-7-3.png

2014jsl2-7-4.png

2014jsl2-7-5.png

2014jsl2-7-6.png

2014jsl2-7-7.png

2014jsl2-7-8.png

△ ページ上部に戻る

平成26年度 第2回JSL研修の分科会報告(傍士先生)

算数B:傍士先生

【授業づくり】

 サバイバル日本語がやっと終わったばかりの来日半年の小学3年生のブラジルの子ども4人に分数を教えるという設定です。分数を扱うのは非常に難しいので、まず数という概念が入っているかについてずいぶん議論しました。同じ2といっても、2は「数」の感覚、2m、2kgと単位がつくと、「量」の感覚になるので、その感覚の違いや扱いの難しさについても、ずいぶん指導していただきました。2年生でも分数をやった上での3年生での分数なので、私たちは3年生の内容を入れなければと思っているのですが、その逸る気持ちを先生がずっと抑えつつ、急ぐより戻ってゆっくり導入のところからやろうということになりました。

2年生の最初の「2分の1」、『同じ大きさに分ける』という所を使って授業を考えました。教科の目標は、分数の意味を理解すること、同じ大きさに分けられるということです。JSLの日本語の目標としては、「同じ」や「大きさ」、「分ける」、「何分の一」という言葉、「同じ大きさに分ける」という文として使えるようになること、そして最後に分けた時に、「同じ大きさに2つに分けたうちの1つ分が2分の1である」と言えるようになることです。やはり、まだ日本語がほとんどわからない子どもたちがいるので、どうするかだいぶ考えたのですが、動機づけとしては、子どもたちは折り紙が好きなので、大きな折り紙をみんなで分けようということになりました。折り紙を提示して、「これを皆で使いたいけどどうしたらいいかな」というふうに、子どもたちから分けるという感覚をつかんでほしいと思って声掛けをしました。

 それから、まず2分の1を分かってほしいので、2人に1枚の折り紙を渡して、2分の1をしっかり頭に入れること。それができたら今度は4人で分ける場合を考えて、4分の1を理解できたらいいなと考えました。それでも45分をオーバーするのではないかとも思ったのですが、2分の1といっても、まっすぐに切ったり、三角に切ったりすることもあるため、とにかく同じ大きさにきちんと分けるということが最初にしっかり掴めて分数の概念が入ればいいなという話になりました。

【参加者の感想】

 算数なので、教科の目標というのはしっかりあるのですが、そこに近づけるために、日本語の目標がきちんとあって、色々な配慮をしていく事の大切さを学びました。

【講師から】

 日本語指導者と算数教師の立場の双方からの参加があり、大変有意義な議論となりました。

実際にJSLの子供達に対して教科指導の授業を組み立てるときに重要なポイントは、教科指導の目的と、JSLの指導目標、この2つを明らかに把握しておくことでしょう。教科の観点からの学習内容は何か、そのためにJSLの子供に対する手だてをどうするか、という話です。そう考えると、JSLカリキュラムの構築も、イメージが湧き易いのではないでしょうか。

 参加者の皆さんは、それぞれの経験から色々なアイデアを出し合っていました。授業の形にまとめる段階では、本研修会で得た知識が活かされていました。理論的知識と経験との両者に立脚した議論が如何に重要か、ということでしょう。私も大変勉強になりました。ありがとうございました。

2014jsl2-6-1.png

2014jsl2-6-2.png

2014jsl2-6-3.png

△ ページ上部に戻る

平成26年度 第2回JSL研修の分科会報告(大菅先生)

日本語B小学校:大菅先生

 大菅チームはA班とB班に分かれて行いました。

 A班の対象は、来日したばかりの子どもです。学級でなかなか国語の授業ができないため、1年生と6年生といった異なる学年が日本語教室に来て、同時に教えなければならないような状況はよくあると思います。そうした状況の場合に、どういう日本語のサバイバルや基礎の指導をどうするか、学年層やレベルに幅がある場合にどうするかということについて考えました。

 学習項目は「○○はどこですか。」、語彙としては「動物の名前」を設定し、活動を三つ考えました。

1つ目は、語彙カードや絵カードで動物の名前を言っていき、そのあと、動物のカードで神経衰弱をします。2つ目の宝探しは教室中に動物のぬいぐるみを隠して「キリンはどこですか。」「ここ。」「あった。」といった風です。「リスはどこ。」「あ、届かない。」といった感じです。3つ目は、『ウォーリーを探せ』のような文字がまったく書いてない絵本を使って、「キリンはどこですか。」とか「ワニはどこですか。」とか、聞いていくというものです。6年生の方は、どちらかというと質問をする側、一年生が答える側にします。まとめの練習プリントも、1年生はひらがなでなぞる、6年生は漢字でどうか書くのかを辞書で調べながらやっていくことで異なる学年、年齢層への対応を考えています。ただ、反省点としては、もう少し実際の言語の使用につながるような語彙、例えば、「消しゴムはどこですか。」や 「保健の先生はどこですか。」など、そういった文を最後の方に扱えばよかったなと思います。

--

 B班は日本語初歩の指導です。「います/あります」という文型の学習を考えました。これを選んだ理由は子供の学校生活に根ざしているということ、他の子たちとのコミュニケーションをとる手段の一つに近づくということです。導入と前時までの復習で意図的に遊具の名前や教室の中や身の回りの物を取り上げます。それから、「何々があります。/います。」という文型の学習に15分取るのですが、まず、運動会のワンシーンが写った大きな写真、または絵を見せながら「何々があります。」「何々がいます。」という文型をおさえます。次に、体育の授業や音楽の授業、登校時の靴箱の様子、昼食の様子などの写真または絵を見せながら「何々があります。」「何々がいます。」という文を作らせます。また、実際にその場所に連れて行って「何々があります。/います。」と言わせる方法もあります。それを15分とったあとに、10分間ワークシートに、先ほどの文型を使って、今見つけたものいくつかを書かせます。まとめとしては、文字のない絵本を見せながら、「何がありますか。」や「何がいますか。」と、先ほど学習したものを今度は絵本を使って子ども達に質問して、答えさせて定着させる、というのも一つの方法ですし、時間的に回れなかった際には、ちょっと学校の中を回って、「何々があります。」、「何々がいます。」というのを実際にやってみるのもいいと思います。

【参加者の感想】

 先ほど、お話していただいたように、最終的には日常生活に使えるようにつなげてあげることが、子どもたちも学んだものをすぐ使えるという意味ですごく大切なんだなということを学びました。

【講師から】

 日本語指導といっても,それぞれの地区,学校によって指導形態や対象の子どもたちが異なりますが,今回はそのことを特に実感しました。日々の指導内容を考えることは大変ですが,少しの工夫でいろいろな子どもたちが複数であっても,指導は可能になると考えています。実際のコミュニケーションで使う場面をできるだけ取り入れることを基本に,指導者側が授業づくりを楽しめば,子どもたちにとっても楽しい授業になると思っています。第三回に皆様の実践が聴けることを楽しみにしております。

2014jsl2-5-1.png

2014jsl2-5-2.png

2014jsl2-5-3.png

△ ページ上部に戻る

平成26年度 第2回JSL研修の分科会報告(小川先生)

日本語C中学校:小川先生

【授業づくり】

 小川先生のグループではJSLの概念と考え方について、中学校の日本語という観点から、しっかり学ばせて頂きました。日本語の時間に学習する表現が子どもたちの生活や学習とどこで結びつくのか、習得した表現がどの場面で生きるのか、ということをしっかり考えてスタートしました。たとえば、受け身の表現を勉強し終えたとき、その受け身の表現が子どもたちの生活につながる場面としては、教科や友達とのコミュニケーションなど色々な切り口があるということを教えて頂きました。

そこで、社会科を例に考えました。まず社会科では「何々されています」というような受け身の形が多いことを知りました。ここで、「自分の国についてまとめよう」という夏休みの課題について考えました。この課題では、調べたことを発表することで、日本語も使いながら社会の内容も押さえることができます。たとえば社会科の教科としては、地理の自然環境、人々の生活、産業などをまとめるときに、言語表現として「○語が使われています」「主に~が作られています」というような受け身の表現が必要になります。そのほか、レポートの中に図や表を書くことを条件にしました。これは、まとめ作業をする時に、「人口」や「面積」というような言葉を漢字で書けるようになる、自分が得た情報を自分の力で図や表にできるようになる(写せるようになる)、グラフについても、「円グラフ」という言葉そのものやグラフの単位をそろえる、円グラフの時にはパーセントが出てくる、などといったことがプラスアルファで勉強できたり、復習できたりするといいなと思いました。

【参加者の感想】

 受け身の表現は、私たちは自然に使っているのですが、外国人生徒にとっては学習が難しい単元です。英語の学習では中学校2~3年で出てきますが、日本語の受け身がわからないと、英語の受け身も理解が出来なくなってしまいます。そのため、英語の学習の前までに必ず日本語で勉強をさせなければいけないなと思っているところです。歴史の教科書も見せてもらったのですが、私たちが思っている以上に受身の表現が非常に多くて、びっくりしながら、やはりここは押さえなくちゃいけないな、教科へつなげるいい学習になるなと思いました。

【講師から】

日本語の学習をできるだけ教科の学習と結びつけ、日本語を勉強したことで在籍学級の授業に参加できるようになるという自己有用感が、中学生にとってはもっとも学習意欲を高める道です。

社会科の「国調べ」という課題は、生徒本人が調べたい項目、表現したい内容を考え、個性を発揮した発表ができる点でもとてもいいと思います。在籍学級では本当の自分を出せない生徒も多いです。課題を通じて、自分らしさ、自分の思いを表現できる機会をつくることも大切だと思います。

2014jsl2-4-1.png

2014jsl2-4-2.png

△ ページ上部に戻る