JSL研修報告

平成26年度 第2回JSL研修の分科会報告(大菅先生)

日本語B小学校:大菅先生

 大菅チームはA班とB班に分かれて行いました。

 A班の対象は、来日したばかりの子どもです。学級でなかなか国語の授業ができないため、1年生と6年生といった異なる学年が日本語教室に来て、同時に教えなければならないような状況はよくあると思います。そうした状況の場合に、どういう日本語のサバイバルや基礎の指導をどうするか、学年層やレベルに幅がある場合にどうするかということについて考えました。

 学習項目は「○○はどこですか。」、語彙としては「動物の名前」を設定し、活動を三つ考えました。

1つ目は、語彙カードや絵カードで動物の名前を言っていき、そのあと、動物のカードで神経衰弱をします。2つ目の宝探しは教室中に動物のぬいぐるみを隠して「キリンはどこですか。」「ここ。」「あった。」といった風です。「リスはどこ。」「あ、届かない。」といった感じです。3つ目は、『ウォーリーを探せ』のような文字がまったく書いてない絵本を使って、「キリンはどこですか。」とか「ワニはどこですか。」とか、聞いていくというものです。6年生の方は、どちらかというと質問をする側、一年生が答える側にします。まとめの練習プリントも、1年生はひらがなでなぞる、6年生は漢字でどうか書くのかを辞書で調べながらやっていくことで異なる学年、年齢層への対応を考えています。ただ、反省点としては、もう少し実際の言語の使用につながるような語彙、例えば、「消しゴムはどこですか。」や 「保健の先生はどこですか。」など、そういった文を最後の方に扱えばよかったなと思います。

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 B班は日本語初歩の指導です。「います/あります」という文型の学習を考えました。これを選んだ理由は子供の学校生活に根ざしているということ、他の子たちとのコミュニケーションをとる手段の一つに近づくということです。導入と前時までの復習で意図的に遊具の名前や教室の中や身の回りの物を取り上げます。それから、「何々があります。/います。」という文型の学習に15分取るのですが、まず、運動会のワンシーンが写った大きな写真、または絵を見せながら「何々があります。」「何々がいます。」という文型をおさえます。次に、体育の授業や音楽の授業、登校時の靴箱の様子、昼食の様子などの写真または絵を見せながら「何々があります。」「何々がいます。」という文を作らせます。また、実際にその場所に連れて行って「何々があります。/います。」と言わせる方法もあります。それを15分とったあとに、10分間ワークシートに、先ほどの文型を使って、今見つけたものいくつかを書かせます。まとめとしては、文字のない絵本を見せながら、「何がありますか。」や「何がいますか。」と、先ほど学習したものを今度は絵本を使って子ども達に質問して、答えさせて定着させる、というのも一つの方法ですし、時間的に回れなかった際には、ちょっと学校の中を回って、「何々があります。」、「何々がいます。」というのを実際にやってみるのもいいと思います。

【参加者の感想】

 先ほど、お話していただいたように、最終的には日常生活に使えるようにつなげてあげることが、子どもたちも学んだものをすぐ使えるという意味ですごく大切なんだなということを学びました。

【講師から】

 日本語指導といっても,それぞれの地区,学校によって指導形態や対象の子どもたちが異なりますが,今回はそのことを特に実感しました。日々の指導内容を考えることは大変ですが,少しの工夫でいろいろな子どもたちが複数であっても,指導は可能になると考えています。実際のコミュニケーションで使う場面をできるだけ取り入れることを基本に,指導者側が授業づくりを楽しめば,子どもたちにとっても楽しい授業になると思っています。第三回に皆様の実践が聴けることを楽しみにしております。

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平成26年度 第2回JSL研修の分科会報告(小川先生)

日本語C中学校:小川先生

【授業づくり】

 小川先生のグループではJSLの概念と考え方について、中学校の日本語という観点から、しっかり学ばせて頂きました。日本語の時間に学習する表現が子どもたちの生活や学習とどこで結びつくのか、習得した表現がどの場面で生きるのか、ということをしっかり考えてスタートしました。たとえば、受け身の表現を勉強し終えたとき、その受け身の表現が子どもたちの生活につながる場面としては、教科や友達とのコミュニケーションなど色々な切り口があるということを教えて頂きました。

そこで、社会科を例に考えました。まず社会科では「何々されています」というような受け身の形が多いことを知りました。ここで、「自分の国についてまとめよう」という夏休みの課題について考えました。この課題では、調べたことを発表することで、日本語も使いながら社会の内容も押さえることができます。たとえば社会科の教科としては、地理の自然環境、人々の生活、産業などをまとめるときに、言語表現として「○語が使われています」「主に~が作られています」というような受け身の表現が必要になります。そのほか、レポートの中に図や表を書くことを条件にしました。これは、まとめ作業をする時に、「人口」や「面積」というような言葉を漢字で書けるようになる、自分が得た情報を自分の力で図や表にできるようになる(写せるようになる)、グラフについても、「円グラフ」という言葉そのものやグラフの単位をそろえる、円グラフの時にはパーセントが出てくる、などといったことがプラスアルファで勉強できたり、復習できたりするといいなと思いました。

【参加者の感想】

 受け身の表現は、私たちは自然に使っているのですが、外国人生徒にとっては学習が難しい単元です。英語の学習では中学校2~3年で出てきますが、日本語の受け身がわからないと、英語の受け身も理解が出来なくなってしまいます。そのため、英語の学習の前までに必ず日本語で勉強をさせなければいけないなと思っているところです。歴史の教科書も見せてもらったのですが、私たちが思っている以上に受身の表現が非常に多くて、びっくりしながら、やはりここは押さえなくちゃいけないな、教科へつなげるいい学習になるなと思いました。

【講師から】

日本語の学習をできるだけ教科の学習と結びつけ、日本語を勉強したことで在籍学級の授業に参加できるようになるという自己有用感が、中学生にとってはもっとも学習意欲を高める道です。

社会科の「国調べ」という課題は、生徒本人が調べたい項目、表現したい内容を考え、個性を発揮した発表ができる点でもとてもいいと思います。在籍学級では本当の自分を出せない生徒も多いです。課題を通じて、自分らしさ、自分の思いを表現できる機会をつくることも大切だと思います。

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平成26年度 第2回JSL研修の分科会報告(市川先生)

算数A:市川先生

【授業づくり】

 2年生の上下の教科書でそれぞれ考えました。

 1つ目は、取り出しの日本語指導学級での指導です。日常会話はできるブラジルの子、日常会話はできるけれども書くことが苦手な中国の子、日本語があまりわからないフィリピンの子をイメージしながら、日本語指導学級に入っている先生と普通学級の先生で話し合って考えました。「○○さんは、37円のガムと28円のチョコを買います。代金は、いくらになりますか。」という問題を考えさせようと思ったときに、やはり、「代金」や「いくら」という言葉がわからないだろうと思いました。そこで先生が役割演技をして、お店屋さんのレジに渡しながら「40円のゼリーと30円のアメを買いました。」という。「代金はいくらになりますか。」と聞くと、「60円です。」と返す、ということを繰り返すことによって、「代金」や「いくら」という言葉を推測させて、体得させていきたいなと思いました。また、最初はブロックやお餅などの具体的な作業を通して、ぴったり何十円になるものの計算を考えていきます。そしてその後、十の束にする作業をしながら繰り上がりのイメージをつかませ、繰り上がって何十何円というのを体験しながら、学習できたらなと考えました。

 もう一つは、具体的に自分の担当する在籍学級でJSLを取り入れたいと思い考えました。25人学級で外国につながりのある児童が2名いるクラスです。1名は入学時に来日した子で日常会話はできる児童、もう1名は日本生まれで日常会話は流暢だけど学習言語がなかなか定着していない子どもです。また、その学級には特別支援学級に在籍する児童もいます。単元は掛け算で、「1辺の長さが2cmの正方形があります。周りの長さは何cmになりますか。」という問題を取り上げました。これを解いていく中で方眼用紙を2cmの正方形に切る作業を入れたいと思いました。この問題文の中の「辺」「正方形」「周りの長さ」「2cm」といったことばをもう一度確認するために、いろんな形を見せて正方形はどれかを確認する、周りの長さは紙をおいて実際に周りを歩かせ、動くことで体得できるようにするなどの方法を考えました。正方形に切る際には、2cmは方眼用紙の2マス分だということを書いてから切って、自分の切ったどこが辺かということを触って確認するというのも考えました。そのあと、AU(b-1)にあるように、「辺がいくつか考えましょう」という言葉を投げかけて4つあると分かり、AU(c-5)にあるように「どんな特徴がありますか。」と聞いて、「全部、同じ長さです」というのが出てきたらいいと思います。その上で「何算で、同じ長さです。2cmです。」「では、何算で計算できますか。」「掛け算です。」「何の段ですか。」「2の段です。」というふうにできたらいいなと思いました。

【参加者の感想】

 導入の場面で体験を入れて、言葉を習得させたり、先ほど説明があったような実際にやってみたりしました。以前「授業のユニバーサルデザイン」の算数の授業をみせていただいたとき、使うところを間違えてしまうと、「できる子」が退屈して最終的に全員力伸びないことがあるとききました。JSLの考えを使うにも考えなければならないと思いました。

【講師から】

 この分科会では、「算数科の文章問題をどのようにわかりやすく伝えるか」をテーマとして進めました。具体的には、「日本語を分かりやすく置き換える。」「効果的な具体物を取り入れる。」「既習事項を生かすことのできる授業展開をくむ。」「わかりやすく伝えるために、AUをよく学び共通した言葉を多用する。」等々たくさんのアイデアが出ました。

 さらに、その上で参加された先生方が、どうしたらJSLを具体的に授業に取り入れられるかをそれぞれの立場で考えられました。

 「学校全体の校内研修として」「初めて受け持った日本語学級担任として」「現在自分の受け持っている教科(算数以外でも・・)」「教育委員会の立場として」と自分自身の明日からの授業(実践)としてこの研修会の生かし方を具体的に考え、語り合っていく姿に身の震える思いがしました。

熱意あふれる、分科会になったことに感謝申し上げます。

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平成26年度 第2回JSL研修の分科会報告(今澤先生)

日本語A:今澤先生

【授業づくり】

 今澤チームはJSLカリキュラムの基本的な考え方と授業作りについてしっかり学ぼうということで、授業を作るというよりは授業を作るためにどうしていくかについてお話を伺いました。

 初めに今澤先生が中国語で授業をしてくださって、私は何を言っているのか全く分からなかったのですが、子ども達はきっとこんな気持ちなんだなと体感しました。もやもやしたというか、時間が止まったような気がしました。そして、JSLカリキュラムを使って授業を作っていく時の目標はその子どもたちが在籍学級で豊かな生きた学びの時間を過ごせるようにしていくことであると学びました。私がさきほど体感したような「止まった時間」を1時間、1日、何か月、何年と過ごしていく子供たちが、少しでも生きた学びができるようにするためには、私たちに何ができるかを考えました。

 理科に例に挙げると、最後にまとめが載っているのですが、そのまとめに何度も出てくる言葉や大切な文を取り出して、子ども達にどのように指導して行くかを考えました。昆虫について学ぶ単元では、まとめに、「昆虫の成虫の体はどれも、頭、胸、腹からできていて、足が6本あります。昆虫の体の形や、動き方は種類によって違います。」とあります。ここでは例えば、「○○は昆虫ですか。」と聞き、「はい、○○は昆虫です。」と答えさせます。この○○の部分に、カブトムシやアリ、チョウなどの昆虫の名前を入れることで、昆虫はこういう仲間がいるんだ、こういう言い方をすればいいんだ、ということが学べます。あとは、「○○は足が6本です。だから昆虫です。」という風に、昆虫は足が6本だから昆虫というんだ、ということをその文型を通して学ぶことができると知り、私はとても画期的だなと思いました。

【参加者の感想】

 教科書上だけではなく、やっぱり話しながら、具体物を使ったり、絵を描かせたり、粘土で作らせたりするというのが大変勉強になりました。

【講師から】 

「JSLの授業づくり」を基礎から考えていこうというグループでした。私の方からJSL授業づくりについて、簡単におさらいの話をしてから、授業の目標(教科の目標、日本語の目標)やターゲットになる語彙や表現、目標を達成するための理解支援・表現支援やおもなやりとりなどを、実際の教科書(算数、理科を中心に)を例にみんなで考えました。子どもたちはほとんどの時間を在籍学級で過ごしているので、「在籍学級に生きる指導」が大切です。在籍学級の授業の時間が「生きた学びの場」になるよう、これからも共にJSLの授業づくりをがんばっていきましょう!

 

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平成26年度 第2回JSL研修の分科会報告(近田先生)

国語A:近田先生

【授業づくり】

(国語)小学校4年生の「ごんぎつね」の題材について2グループに分かれて授業案を考えましたので、それぞれのグループで考えた内容を簡単に紹介します。

 1つ目のグループは、「ごんぎつね」の全ての時間を取り出し指導で行うことを想定して考えました。「ごんマンガ」を作ろうという活動を設定して、登場人物への関心を高め、教材文を読む意欲を持たせることにしました。教師が場面ごとに吹き出しをつけたさし絵を準備します。その吹き出しに子どもたちがごんの気持ちを想像して書いていくのです。全部書くのは大変なので、例えば、「ある秋のことでした」などの場面を表すような言葉や気持ちを表す言葉を、あらかじめ教科書から抜き出してヒントカードとして用意しておきます。子どもたちは、それを見て言葉を書いたりカードを貼ったりしながら、「ごんマンガ」を作っていきます。このように、ごんの気持ちを考えてふきだしに書く活動を通して、国語科の目標として設定した「場面の移り変わりや登場人物の気持ちに注目して、それらを想像しながら、読んでいく」ことに迫ることができるようにしたいと考えました。

 

 2つ目のグループは、先程のグループと違って、単元の一部の時間だけをことを想定して授業案を考えることにしました。今回は「ごんぎつね」の4の場面の紙芝居をつくろうという活動の目当てを設定しました。ここでおさえることは、いつ、どこで、だれが、なにをした、どんな気持ちか、ということです。まず紙芝居に使うさし絵を見せて、「ごんは何をしていますか」、と聞くと、「何かとっている」、と言います。「うなぎ」という言葉を知らないので、その言葉をおさえます。またここでは、ごんは楽しい気持ちだが、兵十は「うわ、盗人狐め」と言って、怒っているという、両者の気持ちの違いを子どもたちに掴ませたいなと思いました。最後に分かったこと(いつ、どこで、だれが、どうした、何と言ったか)を書いた紙を絵の裏側に張り、紙芝居にして読んでみることにしました。こちらが読んだり、子どもが読んだりして役割を交代しながら繰り返すことで、ごんの気持ち、兵十の気持ちがより確かに理解できるようにしたいと考えました。また、地域によって使用する教科書が異なるために、さし絵のイメージから受ける印象がずいぶん違うということにも留意する必要があることに気づきました。

【参加者の感想】

 私は初任者で日本語学級の担当になり自信がないので、指導書の内容を全部教えなければならないと思ってしまい、しつこく教えてしまう傾向がありました。そうすればそうするほど、子どもが理解できない、くどい授業になっていると自分でもずっと思っていました。日本語学級にきているということは、まだ語彙が少なく日本語の表現にも慣れていないということなので、教師が指導内容の大事なことをきちんとと押さえて、その内容や言葉を精選して教えることが非常に重要だと思いました。 

【講師から】

 熱心であればあるほど、あれもこれも教えてあげたいという気持ちがはやるのは、自然な感情だと思います。特に初任の先生方にとっては、多様な子どもたちの個々の成長について見通しをもつことが難しく、教材研究も何から手をつけてよいか困ってしまいます。今回は、JSLの授業づくりは初めてでも教員としての経験豊富な方々も参加されていました。そのご経験からの示唆も伺うことにより、国語科として大事にしなければならないポイントを外さず、目標設定をすることができたと思います。

 また、「ごんぎつね」は、外国人児童には、昔話特有の難しさも重なって、読むことは非常に難しい教材です。しかし、「ごんマンガ」や「紙芝居」という表現活動を設定することで、「意欲を掻き立てる学習活動」を工夫することができました。さらに「言葉のコントロール」「ショートステップ」「意味のある繰り返し」などの支援をその活動の中に効果的に取り入れていました。このように、一つの表現活動を設定することで、多様な支援がばらばらに作用するのではなく、全体として意味のあるものになり、子どもたちの学びを促すのだと考えます。このような学びが、言葉の力が十分でないことどもにも「分かった、できた」という喜びとなり、次の学びへの意欲につながると思います。表現活動も支援方法も、上記の例に限らず様々です。紹介された例をヒントに、各地で個々の実態に合わせた授業を創造し、そして、それらの実践をまた皆さんと共有して、私たちも学び続けていけたらと願います。

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